令和2年1月15日に、厚労省からいわゆるパワハラの指針が告示されました。
(参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)
指針の名称は「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ず べき措置等についての指針」というものです。
この指針は、令 和 2 年6 月 1 日から施行される「女 性 の 職 業 生 活 に お け る 活 躍 の 推 進 に 関 す る 法 律 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律」で適用が開始され、まずは大企業の事業主に義務化が開始されます。
また、セクシュアルハラスメント等の防止対策も強化された内容になっています。中小企業の事業主については、2022年4月から義務化とされており、対策に猶予が与えられているようです。
保護を義務づける対象は雇用関係のある労働者に限定
さて、この指針の内容ですが、基本的に保護の対象が「原則として企業と雇用関係がある労働者」とされていて、就活生やフリーランス(個人事業主)に対するセクハラやパワハラ行為に対しては「対策が望ましい」の表現にとどまり、義務の対象から外れています。(参照:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201912/CK2019122402000156.html)
この点、「対策を義務とする」と、「対策が望ましい」の差をどう考えればよいのでしょうか。そもそも、契約状態の有無や契約の形態が「雇用」か「業務委託」かの違いによって、「ハラスメント対策」に差をつけるという発想はどこからきたのでしょうか。
本来職場で働く人は、それぞれの組織の中で果たす役割があるからその職務を遂行するためにその職場で仕事をしているはずです。そこには互いに尊重すべき「人」と「人」の信頼関係で成り立っているはずで、「ハラスメント対策」をして保護すべき人とそうでない人の区別などあるはずがないと私は思います。そういう意味で、「対策が望ましい」という区別をつけている点が非常に残念です。
対策が「望ましい」は、「しなくてもよい」と言っているのと同じであるとも取れてしまう気がしますし、私自身も個人事業主として活動している一人として、この差がついていることは納得しがたい、というのが率直な感想です。将来的に、同じ職場で働く人すべてを対象として「対策を義務とする」になってほしいなと思います。
パワハラ防止対策は、早く取り組んだほうが組織のメリットが大きい
少子高齢化の荒波の中で人手不足に苦しむ企業の経営者の皆様にとっては、今いる従業員の定着と更なる優秀な人材の確保を望むのであれば、組織の規模の大小にかかわらず、この法律に基づく「パワハラ防止策」にいち早く着手して職場環境を従業員にとって快適な空間になるように取り組むことが、組織にとっての明るい未来につながると思います。
なぜなら、パワハラ対策に真摯に取り組んでいる企業は、優秀な就職・転職希望者からの好ましい視線を集めることになるでしょうし、結果的に健全な職場づくりにつながり、離職率を低く抑えることにも寄与することが見えるからです。
皆様の職場では、ハラスメント対策どうなっていますか?